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(過ぎたことは忘れちまえ)つらつら書くなり
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最近読んだ本について覚書。
 
「夕子ちゃんの近道」、「パラレル」、「タンノイのエジンバラ」、「僕は落ち着きがない」
長嶋有ながしまゆう
この二カ月くらいの間にこれらの本を全部読んだ。現代の文学・小説作品は自己陶酔の度合いが激しすぎるきらいがある(と個人的に思う)ので今まで敬遠してきたのだが、たまたま知り合いが持っていた文庫本をぱらぱらめくっていたら割とおもしろかったのでまとめて読んでみた。上にあげた四作品のうち最初の三つの主人公は、生きる目的を見失った三十代くらいの男性で、最近よくメディアに登場するような典型的なダメ人間のように描かれているように思える。が、大江健三郎賞(だったか?)を受賞しているような作品なので、駄目な部分だけを書くのではなく、それまでの人生で何が起きたのか、どんな考えを持つにいたったのか、そうして生きてゆく中でどういう結論に至るのか、そんなところまで書いているところがすごく良い。最後の一作品は、女子高生が主人公で、地味目の部活動(図書部)をしている中で、どんな事を普段感じているのか、を鋭く描いている。高校生の頃ってこういう感じ方をしていたな、と自分の年輪を否応なく感じさせてくれる。どの作品も、現代の「即金・即決・即楽しい」の三大原則の真逆を行っているので読み手を選ぶかもしれない。
  
「The Secret Speech」 Tom Rob Smith
昨年日本でも翻訳版が発行された「Child44」の続編。ソ連時代のスターリン体制下で、さまざまな障害を乗り越えて事件を解決した前作の続きで、今度はハンガリー独立運動時のフルシチョフ体制をからめて、主人公(レオ・スチェパーノフ)がどのように自身の問題を解決してゆくのかを描いた作品。圧政と理不尽の描写が秀逸で、背景の取材を綿密に行ったことが見て取れる。相変わらずのどんでん返しっぷりで、読者の期待を裏切らない。この本はまだ翻訳されていないが、たぶん秋口くらいには出るのではないか。
 
「青春ピカソ」、「今日の芸術」 岡本太郎おかもとたろう
日本の現代芸術の巨人、岡本太郎による芸術論。非常に面白い。日本の芸術界にはびこる拝西洋主義、むやみな古典崇拝などを一刀両断する文章が痛快だ。繰り返しというものが「芸術」にとってまったく意味のないことであると繰り返し強調し、西洋風の絵を真似ることに終始してきた日本の現代画を批判し、自分はそれを超えて見せたのだと豪語する姿は、見習うべきだろう。美術館などに行って鑑賞する際の自分の視点の持ち方を再確認したくなる。
 
「任天堂」 日本経済新聞社
日本を代表するブランドの一つである任天堂がいかにして業界トップを守ってきたのか、どのようにして新しい体験を生み出してきたのかということを、時系列でまとめつつ開発者へのインタビューを加えて解説した本。「必要のないもの」をひたすら作り続けるためにどれだけの工夫を重ねてきたのか、個人的に凄くためになる内容だった。
 
「コーラン」
言わずと知れたイスラム教の聖典。戦闘的であるように報道されがちなイスラム教が、どのような背景で成り立ってきたのか、に関する解説も豊富で読んでいて面白い。砂漠の部族がお互いに血みどろの争いを繰り返していた時代に、どれだけ被害を少なく済ませるか、という観点から多くの掟を明文化したもの、という考え方が一番ぴったりくるというのが個人的な見解だ。
 
「般若心経・金剛般若経」岩波文庫
日本の大乗仏教の教えはほとんどすべてこの二つの経典に端を発しているということなので、読んでみた。どんな宗教でもそうだが、やはり昔の階層社会を反映した考え方がちらほら見えて不愉快になるが、それでも仏教は一神教の経典よりはそういう印象が薄い。存在と非存在、論理と非論理の対比を対比として扱わず同じ物として、思考の枠組みを日常的視点から外す試み(だと思うのだが)がすごく面白い。
 
「コードの世界」 まつもとゆきひろ
世界中で開発されているコンピュータ言語の中で、日本人が作ったものは極めて少ない。しかし著者のまつもとゆきひろ氏が作った「Ruby」は世界中のwebサーバーで利用されるようになり、日本発のデファクトスタンダードとして有名になった。この本では、プログラミング言語の設計思想や、どのような実装がどのような意図でなされているのか、ということを章分けして詳しく解説してくれる。
 
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